2024年度学部・大学院共修「比較政治」


[授業科目の概要]

1 概要

 この授業では、おもに先進諸国の政治と政策を体系的に比較し、現代政治を分析する視角と日本に関する深い理解を獲得することを目指します。グローバル化は各国にどのような影響を与えているのか? なぜ格差が大きな国と小さな国があるのか? 雇用、社会保障、教育のあり方は国によってなぜ異なるのか? 少子化が進む国とそうでない国の政策の違いは何か? すべての国で極右政党やポピュリズム勢力が伸張しているのか? これらの問いを、政治制度、労使関係、政党システム、社会運動、リーダーシップといった政治学および比較政治経済学の分析視角を用いて考察します。

2 到達目標

(1)先進国の政治経済の基本構造を理解し、その中で各国および日本の特徴を把握すること。
(2)政治学の理論や分析概念を用いて各国の政治、政策動向を分析できるようになること。

[他の授業との関連]

 基礎科目「政治学」「政治思想」の内容を踏まえ、諸外国と日本の現代政治に焦点をあわせた発展的な内容とします。ただし、これらの授業を一部しか受けていなくとも理解できるよう配慮します。また「社会政策」「国際社会学」などの隣接分野とも関係があります。

[授業の内容]

 前半では、先進国の政治を大きく「レジーム」という観点から比較し、現在までの違いを検討します。後半では、政策トピックごとに各国の違いとその背景を比較検討します。また各回ごとに政治学の概念や方法を決め、事例分析をつうじてそれらを習得できるよう配慮します。

1 オリエンテーション
2 比較政治の理論と方法
3 先進国の戦後レジーム@ブレトンウッズ体制とフォーディズム;三つのレジーム
4 先進国の戦後レジームAイギリス、スウェーデン
5 先進国の戦後レジームB日本の戦後レジーム
6 グローバル化と国内政治
7 戦後レジームの再編@スウェーデン、イギリス
8 戦後レジームの再編A日本
9 グローバル化と格差;アメリカの金融主導型レジーム
10 労働市場の二分化
11 少子高齢化への対応
12 ポピュリズムと排外主義 
13 まとめ;日本への示唆

[テキスト]

 政治学、比較政治の基礎文献をリーディング・アサインメントとして一部抜粋します。具体的には検討中ですが、下記のようなテクストの20〜30頁程度が候補となると思います。

久米郁男『原因を推論する』有斐閣、2013年
田中、近藤、矢内、上川『政治経済学』有斐閣、2020年
網谷龍介ほか編『ヨーロッパのデモクラシー(第2版)』ナカニシヤ出版、2014年
粕谷祐子『比較政治学』ミネルヴァ書房、2014年
宮本太郎『福祉政治』有斐閣、2008年
田中拓道『福祉政治史』勁草書房、2017年
水島治郎『ポピュリズムとは何か』岩波新書、2016年

[授業時間外の学習]

毎回20頁程度の教科書をリーディング・アサインメントとして指定します。前もって目を通したうえで、授業に参加してください。

[成績評価の方法と基準]

(1)コメントペーパー(10点×4)
毎回の最後に、授業内容に関連するテーマを一つ設定し、学生同士でグループ・ディスカッションを行います。その内容を踏まえ、manabaに100〜200字程度のコメントを投稿していただきます。全13回のうち4回分(不定期)を集計します。

(2)学期末試験(60点)
基礎的な概念の説明4問程度、長文の論述問題1問。前もって配布したA3のメモ用紙(手書きのみ)のみ持ち込み可。

以上の合計で60点以上をCの目安とし、単位取得者の1/3がA、Aの1/3がA+となるよう相対評価とします。

[受講生に対するメッセージ]

・政治・経済・社会を横断する高度な内容ですが、一人一人が日本と世界の将来について自分なりのビジョンを作り、政治について深く考察することができるよう努力します。

・コロナ明けの対面形式を活かし、学生同士、学生と教員で対話をする機会をできるだけ設けるようにしたいと思います。